第12回 『首が腫れているんです!』 頚部腫瘤(リンパ節腫脹、その他)について

2020年4月3日

「首が腫れてるんで診てもらえませんか?」という患者さんがいます。多くの場合は風邪等又は周囲皮膚からの感染に伴うリンパ節の腫れが原因です。
ただ時折それ以外の病気である可能性もあり注意が必要です。

ポイント

✔️首のしこり(腫瘤)は年齢によって病気の割合、原因が違う。小児は良性疾患の割合が高く中高年は悪性の割合が高い。*1*2
✔️40才未満まではリンパ節腫脹の多くは炎症性・反応性の腫脹である。*3*4
✔️40才以上、2cm以上の頚部リンパ節は腫瘍を念頭に。3cm以上のリンパ節腫脹は悪性疾患の可能性が高い。*3*7*8
✔️リンパ節が数日で腫脹、痛みを伴う場合はウイルス性感染など急性炎症が多い。数週間~数か月で腫脹し痛みがない、縮小しない場合は悪性疾患を疑う。*8

年齢による違い

発生頻度
小児:炎症性疾患>先天性疾患>腫瘍
青年:炎症性疾患>先天性疾患>腫瘍
中高年:腫瘍>炎症性疾患>先天性疾患 *2

松浦も15才以下、16~40才未満、40才以上で同様の疾患と発生順位を示しています。*3

代表的疾患

小児:
炎症性・反応性のリンパ節腫脹
先天性(正中頸のう胞、側頸のう胞、類皮のう胞、リンパ管奇形等)
腫瘍(血管腫、脂肪腫、神経線維腫、唾液腺腫瘍など)

成人:
良性腫瘍(血管腫、脂肪腫、神経原生腫瘍など)
悪性腫瘍(癌のリンパ節転移、悪性リンパ腫、頭頚部癌)
炎症性・反応性のリンパ節腫脹
先天性(正中頸のう胞、側頸のう胞、リンパ管奇形等)

腫瘤の割合

●悪性疾患を見逃さない事が重要→頻度の高い中高年を中心に考える。中高年の頚部腫瘤では「甲状腺以外の頚部腫瘤は80%が腫瘍性で、そのうち80%が悪性で、悪性の80%が転移性で、その80%が頭頚部癌のリンパ節転移である」とされています(Skandalakisらのrule of eighty)。*2 又、50才以上のリンパ節腫脹の約半数が悪性腫瘍であったとする報告もあります。*4

頚部リンパ節腫脹

●一方、成人も子どもも共通して、リンパ節腫脹の 70~80%は先行する上気道炎などに伴う非特異的なリンパ節炎(ウイルスや細菌が原因)とする報告が多いです。*4*5*6
炎症性・反応性リンパ節腫脹 81%
非特異的炎症 71%
特異的炎症 10%
◆原発性悪性腫瘍(悪性リンパ腫) 13%
◆転移性悪性腫瘍 6% *4

●正常なリンパ節の大きさは通常1cm以下であり1cm以上を腫脹と考えます。1cm以下は悪性の事は少なく、2cm以上になると腫瘍の可能性が高まり*7 3cmを超えると悪性の可能性が高いと言われています。*8

●よって2cm以上の頚部リンパ節に対しては上記のrule of eightyから悪性腫瘍を念頭に考えることが重要です。機器等の問題から腫瘤・リンパ節の区別ができない場合、40才以上、2cm以上の頚部腫瘤は悪性腫瘍を念頭に置くこととなります。1cm~2cm未満のリンパ節腫脹は炎症性・反応性の可能性が高く日常診療で遭遇するのはこちらが多いと思われます。

診察の進め方

●①問診→②視診・触診→③血液検査→④画像検査→⑤病理学的検査となります。クリニックでは①~③となる事が多いです。
炎症性・反応性のリンパ節腫脹(非特異的、特異的炎症)か否かを確認(先行感染などあるか、いつから、急か、ゆっくりか、悪化しているか良くなってきたか)。数日で腫脹、痛みを伴う場合はウイルス性感染など急性炎症が多い。数週間~数か月で腫脹し痛みがない、縮小しない場合は悪性疾患を疑う。*8
②鼻腔、口腔、咽喉頭に炎症所見はあるか。頚部リンパ節の腫脹は両側性か片側性か。圧痛はあるか。
③炎症性・反応性リンパ節腫脹を起こす疾患で白血球の数、種類、炎症反応、生化学検査で異常が見られるものがあり有用です。

その他

●炎症性・反応性リンパ節腫脹を起こす疾患の中で特異的炎症を起こす疾患(リンパ節腫脹の約 10%)。
◆伝染性単核球症
◆組織球性壊死性リンパ節炎(亜急性壊死性リンパ節炎)
◆結核性リンパ節炎
◆トキソプラズマ症
◆猫ひっかき病
◆キャッスルマン病
◆木村氏病
◆サルコイドーシス
◆川崎病 など

気になったこと

●Skandalakisの頚部腫瘤の割合と*4のリンパ節腫脹に隔たりがあるのは?特に転移性悪性腫瘍(=リンパ節転移)、反応性リンパ節腫脹で開きがあるのは?
→*4の文献は対象の平均年齢が42.7才、20~40才代が多い。対象者の内50才以上では悪性疾患の割合が46.3%と急上昇しています(50才未満は6.5%)。年齢による違いを裏付ける結果と考えます。

首のしこりが気になったら宝クリニックにご相談下さい。

引用出典
*1 喜夛淳哉ら 頚部腫瘤.JOHNS Vol.36 No.10 2020
*2 太田伸男ら 頚部腫瘤.JOHNS Vol.37 No.9 2021
*3 松浦一登 頚部腫瘤の診察と診断法.日耳鼻スキルアップ講座.2012
*4 内水浩貴ら 過去5年間の頚部リンパ節腫脹に対する検討.日耳鼻会報.115:546-551.2012
*5 松浦聖平ら 頚部リンパ節腫脹84例の臨床的検討.昭和学士会誌.80(6):517-524.2020.
*6 大内陽平ら リンパ節の腫脹.MB ENT.290:33-39.2023
*7 三浦偉久男 リンパ節腫大の鑑別診断と治療法の選択.日本内科 学会雑誌 105巻3号.2015
*8 新津望 悪性リンパ腫診療スキルアップ.中外医学社.2012