第6回宝コラム 百日咳が流行っているんです!

2025年5月27日

2025年は全国的に百日咳が増加しています*1。 静岡県では第14週~増加傾向であり第15週に21人、第19週で23人と前年比で依然として高い数値です*2。

ポイント

✔️静岡県報告では年齢分布では10-14才が最多、続いて5-9才が多い*2。乳児がいる家庭で5種混合ワクチンをまだ接種していない場合、咳をしている兄弟から感染する可能性あり。
✔️生後6ヶ月未満の乳児が感染すると無呼吸など重症化する場合があり生後2か月以降、速やかなワクチン接種(5種混合ワクチン)をお勧めします。
✔️赤ちゃんがいるご家庭の年長児、または11-12才のご兄弟は3種混合ワクチン接種(任意)を検討して下さい!

百日咳について

●新型コロナウイルス感染症(COVID-19)流行による感染対策の強化に伴い、全世界で2020年から2022年にかけて報告数が減少。対策緩和に伴い2023年以降に流行が報告。

●日本においても同様で2024年、2025年と増加傾向です。2025年は診断週第12週時点で4,200例。これは全数把握対象疾患になった2018年以降の同時期(第12週)としては過去最多(百日咳の発生状況について|国立健康危機管理研究機構 感染症情報提供サイト、図1)で、すでに2024年の年間届出数4,054例を超えました。*1

●百日咳菌を原因とする激しい発作性の咳を特徴とする感染症。感染性は非常に高く飛沫(唾液)から感染、潜伏期は7-10日程度。症状は百日咳ワクチンの接種有無によって差があります*3。

●(症状)未接種の乳児では以下の症状が典型的。
カタル期 咳、鼻水が主な症状。時に結膜炎あり。1-2週間持続し6カ月未満の乳児では徐脈や無呼吸となる事がある。
痙咳期 連続性の咳に引き続き吸気に伴う笛の音の様な呼吸音。これを繰り返し最長8週間程続く。
回復期 咳症状は減っていくが6週間ほど持続。
乳児期の百日咳は約半数が入院となる。無呼吸、肺炎、肺高血圧症などを合併することがある。
思春期・成人:乳幼児と比べて症状は軽く気付かれにくい。発作性の咳が無いこともある。3-8週間程度続く。

●(治療)①症状の改善、②除菌による二次感染予防を目的としマクロライド系抗菌薬が投与される*3。マクロライド耐性百日咳菌に対してはST合剤を考慮。

●6ヶ月未満の乳児の感染源は?!
2018年(1/1~9/30)の感染症発生動向調査では百日咳患者6443例中6ヶ月未満時が5%。7才をピークとした5~15才未満が65%と最多。30~50代の成人が14%でありました。推定される感染源は同胞が最も多く、次いで両親、祖父母と報告されています*4。

●百日咳患者が増加する理由!
予防接種により過去数十年にわたり世界各国で百日咳患者数は減少していましたが2000年代に入りワクチン接種率の高い国を中心に患者数の増加が報告されています。これは検査の普及の他にワクチン等により獲得された免疫の減弱による影響と考えられ複数の国で学童期以降の百日咳含有ワクチン接種が導入されました。日本小児科学会は3種混合ワクチンの就学前(年長児)追加接種と、11-12才で2種混合ワクチンに代えて3種混合ワクチンを任意で追加接種する事を説明しています*3。

●(その他)思春期や成人では病期がはっきりしないため!
① 咳のみ、あるいは咳嗽が主な症状でそれが1週間経過しても悪化している状態。
② 発作性の咳
③ 咳嗽後嘔吐
の3点が百日咳の手掛かりとなります。*5

●薬剤耐性百日咳について
2011年から中国でマクロライド耐性の百日咳菌が報告され2020年には57.5~91.9%を占めています。日本でも耐性菌が報告されており注意が必要です。耐性菌に対する治療薬としてST合剤の使用が考慮されておりますが低出生体重児、新生児、妊婦には使用できないため注意が必要です。*6
 
●6カ月未満の赤ちゃんは速やかに5種混合ワクチンを接種しましょう!又、赤ちゃんがいるご家庭の年長児、または11-12才のご兄弟は3種混合ワクチン接種(任意)を検討して下さい!宝クリニックで承ります。

引用出典
*1 JIHS 国立感染症危機管理研究機構感染症情報提供サイト
*2 静岡県公式HP静岡県感染症週報、発生動向総覧
*3 百日咳 中村幸嗣 小児内科 vol.55 増刊号 2023
*4 百日咳 神谷元 東京小児科医会報 2019 MARCH vol.37 No.3
*5 Long.S.S.:Bordetella. In: Schlossberg.D.ed..Clinical Infectious Disease.
2th ed.. 859-862. 2015
*6 日本小児科学会HP 予防接種・感染症対策委員会 百日咳患者数の増加およびマクロライド耐性株の分離頻度増加について