第9回 宝コラム 『えっ!コロナですか?』
2025年11月23日
新型コロナと診断した患者さんからよくそう言われます。どなたでもびっくりしますよね。最近の型は重症度が低く風邪と区別がつきませんから。
新型コロナ感染症(COVID19)はこれまでの傾向では夏と年末年始に感染者が増加しています。令和7年、第46週(11/10~11/16)現在、静岡市では新型コロナ感染者は減少し注意報は解除されています(1.56人/定点当たり<基準値8人)。syuuhou2025-46.pdf *1
県内の新型コロナウイルス変異株の状況は、令和7年4月頃から新たにオミクロン系の派生株、NB.1.8.1系統が検出されました。現時点ではNB.1.8.1系統によって重症者が増えるという情報はなく、県内のコロナの入院患者数も少ない状況です。発生動向総覧|静岡県公式ホームページ *2
ポイント
✔️オミクロン株は数カ月ごとに変異を繰り返し
2024年、JN.1→KP.3→
2025年XEC→JN.1系統近縁のXDV.1由来のNB.1.8.1へ。 *6
✔️年末年始にかけて流行拡大の可能性あり!
✔️オミクロン系は、感染力は高いが毒性は低い(今の所)。ただしインフルエンザと同等かそれ以上の重症化リスクがある(60才以上は注意!)。 *6
✔️手洗い、マスク、換気で予防。人込みも避ける。
✔️(治療)軽症で重症化リスク(高齢、基礎疾患等)のない場合→一般的な風邪の治療で対応。
入院不要な軽症又は一部の中等症で重症化リスクがある場合・又は重症化リスクはないが症状が強い場合→抗ウイルス薬の処方を検討。 *3
● (ワクチン)
2025年度はJN.1下位及び近縁系統であるLP.8.1とXEC、NB.1.8.1に対応した5種類のワクチンが供給される(コミナティ、スパイクバックス、ヌバキソビッド、ダイチロナ、コスタイベ)。いずれも効果が期待され臨床試験で安全性が確認されています。 *5 *6
新型コロナ感染症に関してこれまでの経緯をまとめてみました。
■ 1. 最初の感染拡大(2020年〜2021年前半)
新型コロナ感染症はSARS-CoV-2というウイルスによる感染症で2019年12月に中国・湖北省武漢市で初めて確認されました。その後急速に世界中に感染が拡大。日本では2020年1/15に初症例が報告され2/1に指定感染症とされ全数届出開始。1月末~2月に武漢からのチャーター便とクルーズ船(ダイヤモンド・プリンセス号)から感染者が報告。3月に欧州などでの感染が疑われる患者が増加。4月上旬をピークとする流行により全都道府県に緊急事態宣言が出されました(いわゆる第1波)その後は以下の経過をたどりました。*3
2020年6月中旬~8月上旬ピーク(いわゆる第2波)
2021年1月上旬ピーク(いわゆる第3波)→2/13、2類相当に指定へ
外出自粛や学校の休校、イベントの中止など、社会全体が大きく制限されました。当初はウイルスの性質や治療法が十分に分からず、多くの方が不安な日々を過ごされたと思います。
■ 2. ワクチン接種の広がりと変異株の流行(2021年〜2022年)
2021年5月をピーク(アルファ株中心、いわゆる第4波)
2021年8月をピーク(デルタ株中心、いわゆる第5波)
2022年2月をピーク(オミクロンBA.1、BA.2中心、いわゆる第6波)
2022年7月下旬をピーク(オミクロンBA.5中心、いわゆる第7波)
2021年2月からワクチン接種が順次開始され、重症化を防ぐ効果が確認されました。一方で、「デルタ株」「オミクロン株」など感染力の強い変異株が次々と現れ、感染者数が増減を繰り返しました。
ワクチンの普及と医療体制の整備によって、重症化や死亡例は徐々に減少しましたが、医療現場の緊張状態はしばらく続きました。
■ 3. 社会の再開(2023年〜現在)
2023年1月をピーク→2023年5/8に5類感染症に移行。
2023年8月、2024年2月をピークとする流行あり。
2023年5月、新型コロナは感染症法上の位置づけが「5類感染症」となり、インフルエンザと同じ扱いになりました。
行動制限はなくなり、マスク着用も個人の判断に委ねられています。
社会活動はほぼ通常に戻りましたが、依然として感染は続いており、特に高齢者や持病のある方では注意が必要です。
2021年末オミクロン株発生以降、多くの亜系統が発生し世界中で流行株が次々と置き換わっています。オミクロンとその亜系統は感染力が非常に強いのですが毒力は低下し重症化する割合は減少しています。しかしワクチン等へ抵抗性を示す亜系統も発生しており国立感染症研究所で継続的な監視が行われています。*3
■ 4. これからの感染症対策
日常生活で意識したいポイント
・体調がすぐれないときは無理をせず休む
・手洗い・うがい・換気をこまめに行う
・状況に応じてマスクを着用する
・ワクチン接種の情報を確認し、必要に応じて追加接種を検討する
(症状)
潜伏期間は1~7日。咽頭痛、鼻汁、鼻閉といった上気道症状に加え倦怠感、発熱、筋肉痛といった全身症状が生じることが多いです。インフルエンザに似ていて症状から区別する事は困難。軽症者(咳のみで呼吸困難なし、肺炎所見なし)は発症後1週間以内に軽快する事が多いです。オミクロン株以降、重症化の頻度は減りましたがリスクの高い方(高齢、基礎疾患あり等)は感染が下気道まで進展(肺炎:中等症)したり、呼吸不全や多臓器不全(重症)に至る可能性があります。 *3
(診断、治療)
簡易検査キット(抗原定性検査)は発症から9日以内の確定診断に有効。入院不要な軽症~一部の中等症で重症化リスクがある場合→発症から5日以内であればニルマトレルビル/リトナビル(商品名パキロビッド)が推奨。重症化リスクがなく症状が強い場合→発症から72時間以内であればエンシトレルビル(商品名ゾコーバ)が推奨。 *3
●重症化リスクが高い場合、発症から2週間目までに症状が進行する事があります。早期に抗ウイルス薬を投与する事は入院や死亡を減らすことが期待されています。 *3
●新型コロナ罹患後は1年間にわたって心血管疾患や呼吸器疾患のリスクが1.6~3.6倍増加します。認知機能低下や認知症の発症にも関連しています。 *6
●新型コロナの死亡数は、2024年は35865人(>インフルエンザ2855人)。前年より大きく減少しておらず約97%が65才以上の高齢者。 *6
●60~70代、80代以上の重症化率(2022年、0.26%、1.86%)は減少していますがインフルエンザと同等かそれ以上です。 *6
(ワクチン)
2024年4月~年1回の定期接種(B類疾病)となりました。65才以上及び60~64才で心臓、腎臓、呼吸器の機能に障害があり身の回りの生活が極度に制限される方が対象です。生後6ヶ月~64才の方は任意で接種可能。
●2025年度はJN.1系統変異株であるLP.8.1とXEC、近縁のNB.1.8.1に対応した5種類のワクチンが供給されます(コミナティ、スパイクバックス、ヌバキソビッド、ダイチロナ、コスタイベ)。いずれも効果が期待され臨床試験で安全性が確認されています。インフルエンザワクチンと同時接種も可能です。 *5 *6
■ 5. 気になったこと
なぜ短い周期で変異を繰り返すのか
インフルエンザと同じRNAウイルスであるため体内で増殖=コピーをするときに修正機能が低くコピーミスが起こりやすい。
インフルエンザよりもさらに感染力が高いため多くの人に感染し、膨大なコピー回数となり結果として変異が生じやすく周期が早くなると考えられます。
オミクロン系統が持続しているのはなぜか
オミクロン株は過去のアルファ株やデルタ株に比べ感染力が高い→変異が生じやすい→ウイルスの生存に有利な変異が生まれる可能性が高いという事になります。実際、変異のたびに免疫を回避する力が強まっているようです(免疫逃避)。 *6
・年末年始にかけて感染者の増加が予想され注意が必要です。手洗い、マスク、換気といった感染予防に務めましょう。
・感染症に関するご心配、ご相談は宝クリニックにお気軽にご連絡下さい。
引用出典
*1 静岡市HP 感染症発生動向調査(2025年)週報
*2 静岡県HP 静岡県感染症週報 発生動向総覧
*3 新型コロナウイルス感染症 COVID19診療の手引き 第10.1版
研究班最終報告
*4 新型コロナウイルス感染症 COVID19診療の手引き 別冊
罹患後症状のマネジメント第3.1版
*5 COVID19ワクチンに関する提言(第11版) 一般社団法人
日本感染症学会 ワクチン委員会・COVID-19ワクチンタスクフォース
*6 2025年度の新型コロナワクチン定期接種に関する見解
一般社団法人日本感染症学科 一般社団法人日本呼吸器学科
日本ワクチン学科