第3回宝コラム 鼻からのインフルエンザワクチン、出たんです!
2024年10月7日
2024、10月~例年通りインフルエンザワクチンの接種開始しました。今年のトピックは鼻から投与できるワクチン(経鼻弱毒生インフルエンザワクチン:LAIV、商品名:フルミスト)が開始された事です。2003年に米国で承認され、2023年4月時点で36の国と地域で承認されています。*1
対象:2才~19才未満
製品特徴:今回の接種は3価ワクチン(A/H1N1、A/H3N2、B/ビクトリア系統)。分泌型IgA抗体により気道粘膜免疫を、加えてIgG抗体による全身免疫を誘導することが期待されます。*1、*2
投与方法:左右の鼻腔内に各0.1mlを1噴霧ずつ、合計2噴霧。シーズン1回で完了。
有効性:国内2016/17シーズンに2才~19才未満を対象とした、全ての株のインフルエンザに対するLAIVの予防効果は28.8%。ただし多くを占めたA/H3N2の予防効果28.0%でしたがA/H1N1やB型での有効性は確認できませんでした。米国で一時期LAIVの低い有効性から推奨が中止(2016/17および2017/18シーズン)されましたが、2018/19シーズン以降は再開されており従来の不活化ワクチンと同等に推奨されています。*1
接種不適当者(接種できません):生後6ヶ月~2才未満。19才以上。明らかな発熱、急性疾患患者。免疫不全症。妊婦。無脾症。ゼラチンアレルギーのある方。中枢神経系の解剖学的バリアー破綻がある方。ミトコンドリア脳筋症。
接種要注意者(従来のワクチンをお勧めします):喘息症。鶏(鶏卵、鶏肉等)アレルギーで従来ワクチン使用できる方。授乳婦。周囲に免疫不全患者がいる方。
メリット:痛みがなく1回(両鼻)の接種で完了です。
デメリット:若干割高です。当院では今シーズン7500円で承ります。
(副反応)鼻水、鼻閉(59.2%)、咳、のどの痛み、頭痛(10%以上)、鼻咽頭炎、下痢、腹痛、発熱、筋肉痛等(1~10%未満)が現れることがあります。
まれにショックやアナフィラキシーなど重大な副反応もあり体調変化や異常を認めた場合は速やかにご連絡下さい。
(水平伝播)LAIVの接種を受けた小児は鼻咽頭分泌物中にワクチンウイルスを最長3~4週間排出する可能性があります。ワクチン接種後1~2週間は重度の免疫不全者との密接な接触は可能な限り避けて下さい。*1
また乳児との密な接触も1~2週間は避けた方が無難と考えます。
気になった事
●従来型ワクチンと有効性、副反応の比較はどうか?
(有効性)
日本小児科学会の見解では1歳以上6才未満での従来型ワクチン有効率(20-30%)と同等としているようです。慶応大学小児科の2013-14年シーズン以来のデータでは1才以上6才未満では従来型ワクチンの発病防止効果は41-66%、米国CDCは6ヶ月~8才小児のインフルエンザに対するワクチンの発病防止効果は56-68%としています。これらと比べるとLAIVの有効率が低いように感じますが、LAIVの問題点として有効率(発病防止効果)は国により、流行年により、報告によりかなり異なる結果となっており、どちらのワクチンが優れているとは言い切れないという意見があります。*3
(副反応は?)
従来型ワクチン(ビケンHAワクチン)は6か月以上13才未満では注射局所症状(紅斑、腫脹、硬結、熱感、掻痒感など)が主体であり(5%以上)、鼻漏、下痢、湿疹、発熱、咳嗽、倦怠感が0.1~5%未満。それ以上の年齢の副反応は様々ですが「頻度不明」=さらに少ないと予想されます。副反応に関してはLAIVより従来型ワクチンの方が少ないようです。
●どのくらいの期間予防できる?
抗体ができるまでに約2週間かかり、その後具体的に何カ月予防できるかは不明。
1シーズン(10月接種して~2、3月くらいまで)の有効性との事です(製薬会社より)。
●経鼻不活化ワクチンはないのか?
水平伝播の可能性があるため経鼻生ワクチンよりは経鼻不活化=無毒化されたワクチンの方が望ましいと考えます。
高齢者、免疫不全症、妊婦等、LAIVでは接種できない人が可能になると思われます。未承認ですが臨床研究の段階では経鼻不活化ワクチンの有効性は現行の注射型ワクチンよりも高いことが示されており今後の承認が期待されています。*2
副反応等、価格の問題はありますがそれでも痛みのないワクチンは小さなお子さんにとって大きなメリットです。ご希望の方は宝クリニック、アイコール予約【定期予防接種】からご予約下さい!
文献
*1.経鼻弱毒生インフルエンザワクチンの使用に関する考え方.日本小児科学会予防接種・感染症対策委員会
*2.経鼻不活化および生ワクチンの有効性評価.長谷川秀樹 インフルエンザVol19 No1(2018-1)
*3.経鼻弱毒生ワクチン(LAIV)と不活化インフルエンザワクチン(IIV). 菅谷憲夫 東京小児科医会報2024 vol.42 No.2