第2回宝コラム 2024年 手足口病が流行っているんです!

2024年8月28日

2024年夏は静岡市の手足口病、ヘルパンギーナの定点当たりの患者数が警報レベルを超えました(それぞれ5人以上/定点、6人以上/定点)。
特に手足口病は第28週、7/8~14で19.8人/定点と大流行しました。気になったので色々と調べてみました。

<<手足口病とは>>
夏に流行する代表的な感染症。口腔粘膜、手や足に現れる水泡性の皮疹を主症状とする。
原因ウイルスはエンテロウイルス属(コクサッキーA16、エンテロウイルス71、コクサッキーA6など)であり同じエンテロウイルス属が原因で起きる病気にヘルパンギーナがある。
4歳位までの幼児を中心に2歳以下が約半数を占めます。学童でも発生。それ以上の年齢では既に感染経験があるため成人では発症は少ないようです。*1

<<症状経過は>>
感染後3~5日の潜伏期の後、水泡で発症。7日程度で自然治癒します。
特効薬は無く症状に対する治療、特に経口補水液等による水分補給が重要です。
又、水泡や風邪症状がある時の鼻汁や唾液からの感染に注意しましょう。
回復した後も便から2~4週間はウイルスが排泄されるため本人、ご家族はしっかり手洗いする事が重要です。*1
アルコール消毒は効きにくいので次亜塩素酸ナトリウム(ハイター)を薄めて布に使用し環境消毒に努めて下さい。(皮膚や手指には使用できません)

<<過去と比較して感染者数は>>
静岡市ホームページ、感染症発生動向調査によると2024年は過去5年間で2022年の7.2人/定点を抜いて最多。
記録のある2017年からでも2017年の15.2人/定点を抜いて最多の感染者数となりました。

(2024年感染症発生動向調査(速報・月報):静岡市公式ホームページ (shizuoka.lg.jp):静岡市保健所)

<<今回の原因ウイルスは>>
静岡市では原因ウイルス検査は行っておりません(保健所より)。
国立感染症研究所のご説明では2024、8/15現在、静岡県からの検査依頼はされていないとの事です。
今年は全国的にはコクサッキーA6型が流行しています。


tetizu_23240719.gif (1592×1057) (niid.go.jp)teashien_240719.gif (1503×1284) (niid.go.jp)
国立感染症研究所ホームページより

<<当院での手足口病患者数、年齢、症状、経過は>>
口腔内、手足に明らかに発疹、水泡がある場合に診断。口腔内だけの発疹はヘルパンギーナとしました。
6~8月の手足口病は39例(6月2例、7月14例、8月23例)。約半数が2才以下で発熱38℃以下が大半でした。ほとんどが1週間で治癒しています。元々の中耳炎に手足口病合併が4例ありそのうち再診した2例は鼻汁と中耳炎の残存のため継続診療となりました。

2才以下が約半数であり過去のコクサッキーA16、コクサッキーA6流行年とほぼ同様の傾向が見られました。*2
コクサッキーA6型が原因の手足口病は、従来型に比べ発熱率が高いとされています。*3
当院では38℃以上の割合は低く、その特徴は見られませんでした。

<<ちょっと疑問?>>
2017、2019年は全国的な感染者数増加に比例して静岡市の感染者数も15.2人/定点/第30週、14.3人/定点/第30週と流行が見られました。
国立感染症研究所によると2024年は全国的なエンテロウイルス属の分離、検出報告数で流行は見られますが過去比較でそれほど多くないようです。
それにも関わらずなぜか静岡市で手足口病感染が大流行しています。

<<今後の感染動向、気になる事>>
静岡市の流行のピークは第28週、7/8~14でその後減少傾向です。
例年8月末~9月初めには終息することが多いです。あと少しですね。頑張りましょう。
2024年、全国的な原因ウイルスはコクサッキーA6型です。
このウイルスに特徴的な症状として感染後、数週間~2か月で爪の変形、脱落(爪甲脱落症)が報告されています。*4
気になる症状がありましたら宝クリニックにご相談下さい。

文献
*1.国立感染症研究所ホームページ、手足口病とは
*2.松岡高史ら:2011年夏季に松本市地域で流行した手足口病とヘルパンギーナの疫学的・臨床的特徴
*3.小林正明 他.2011年のコクサッキーウイルスA6型感染による手足口病の臨床的特徴―静岡県.病原微生物月報.Vol32No8, 2011
*4.柏井健作 他.手足口病に脱落した爪からのコクサッキーウイルスA6型の検出―和歌山県.病原微生物月報.Vol32 No11, 2011