第8回宝コラム インフルエンザの季節なんです!
2025年9月23日
令和7年も9月からインフルエンザワクチン予約を開始しました。10/1~接種開始です。改めてインフルエンザについて調べてみました。
ポイント
✔️カゼに比べ全身症状が強い。高齢者、肺、心臓、腎臓に持病のある方、糖尿病、免疫機能が低下している人は持病の悪化と肺炎を起こしやすくなる。*2
✔️感染した場合極力人と接触しない。予防として三密(密閉、密集、密接)を避ける、マスク・手洗いの励行が有効。*4
✔️ワクチンの予防効果は50%前後*5(不活化ワクチン、経鼻生ワクチンは同等の効果)。重症化や合併症の発生を予防する効果もある。
✔️流行のピーク(12月と予想)2週間前までにワクチン接種する事が望ましい。
● インフルエンザウイルスはヒトや動物の主に呼吸器に感染症を起こすウイルスです。A~D型がありA、B型が季節性インフルエンザの原因になります。C型は主に小児で感染、流行(2歳以下で下気道炎となりやすく6才以上では稀。特効薬はありません)しD型はウシとブタで感染します。*1
A・B型インフルエンザウイルスはエンベロープという膜に覆われ、この膜上にHAとNAという2つの糖たんぱく質が存在しその型によって分類されます(A型はHA18種類、NA11種類。B型はHA、NAとも1種類のみ)。ヒトではA型ではH1N1、H3N2の亜型が流行しています。*1
● (症状)
A又はB型インフルエンザウイルスの感染後1-3日程度の潜伏期を経てその後、38℃以上の高熱、頭痛、全身倦怠感、筋肉痛・関節痛などが突然現れ、咳、鼻汁などが続き約1週間の経過で軽快します。風邪と比べて全身症状が強く高齢者、肺、心臓、腎臓に持病のある方、糖尿病、免疫機能が低下している人は持病の悪化と肺炎を起こしやすくなります。小児では中耳炎の合併、熱性けいれん、気管支喘息を誘発する事もあります。*2
● (診断、治療)
抗原迅速診断キットで診断。治療には4種類のノイラミニダーゼ阻害薬(タミフル、リレンザ、イナビル、ラピアクタ)と1種類のキャップ依存性エンドヌクレアーゼ阻害薬(ゾフルーザ)が使用可能です。ノイラミニダーゼ阻害薬が細胞内で増殖したウイルスが細胞外に拡がるのを防ぐのに対し、キャップ依存性エンドヌクレアーゼ阻害薬は細胞内でのウイルス増殖を抑える仕組みです。タミフル、ゾフルーザとも耐性株の出現が懸念されています(ゾフルーザは12才未満で耐性株の出現頻度が高い)。*3
● (予防)
2020/21、2021/22シーズンは新型コロナ対策によってインフルエンザはまるで流行しませんでした。つまり行動制限(感染してもしなくても)、三密(密閉、密集、密接)を避ける、マスク・手洗いの励行が有効であったことを意味します。ただ現状では無症状の人に行動制限やマスクを強要する事は難しいです(症状があっても難しいです)。そうするとインフルエンザの流行をどれだけ小規模にできるかという事になり以下が重要と思われます(感染源対策、感染経路対策、感受性宿主対策)。
① インフルエンザ陽性となった場合、極力人との接触は避ける
② 感染者が発生した場合の学級閉鎖
③ 人込みは避ける
④ 規則正しい生活(バランスの取れた食事、睡眠を確保し疲労を残さない、喫煙しない等)
⑤ マスク・手洗い、ワクチン接種 *4
● (ワクチンの種類、効果)
不活化ワクチン(微生物またはその成分のみを不活化=再度増殖できないようにしたワクチン)と2024年からは鼻から投与する弱毒生ワクチン(弱いながらも微生物が増殖力を保持しているワクチン)があります。不活化ワクチンは13才未満では2回接種ですが、経鼻生ワクチンは1回のみの投与です(2才~18才で接種可能、妊婦や免疫不全者は不可)。
予防効果は50%前後(不活化ワクチン、経鼻生ワクチンは同等の効果)。生後6ヶ月~1才未満の乳児への不活化ワクチンの効果は乏しいと言われていますがある程度の効果は示されています(A型で36%)。又、妊婦に不活化ワクチンを接種することでおおむね生後6ヶ月までは乳児に予防効果があるという報告があります(予防効果50%)。*5
● (ワクチン株の選定)
WHOは例年2、9月に北半球、南半球にワクチン株を推奨しそれを基に国立感染症研究所、国内メーカー、厚生労働省で審議され製造、販売となります。
2025/26シーズンのワクチンは以下のA型2種類、B型1種類です。
A(H1N1)pdm09亜型ウイルスワクチン株(A/Victoria/4897/2022 IVR-238)
A(H3N2)亜型ウイルスワクチン株(A/Perth/722/2024 IVR-262)
B/ビクトリア系統ワクチン株(B/Austria/1359417/2021 BVR-26) *6
● (新型インフルエンザの発生)
インフルエンザウイルスの抗原性の変化には2種類あり
① 突然変異によりHAとNAの抗原性が少しずつ変化する(抗原連続変異、抗原ドリフト)
② 1つの細胞に異なる2種類以上のウイルスが感染し遺伝子が混ざり合い新たなウイルスが作られる(遺伝子再集合)。これを抗原不連続変異(抗原シフト)と言う。*3 ブタは呼吸器上皮に鳥型とヒト型の両方のインフルエンザウイルスに対するレセプターを持ち、2つのウイルスによる共感染により遺伝子再集合ウイルスが生まれる。*1
①のため毎年ワクチンの種類を調整する必要があり、②によって新型インフルエンザが発生します。新型インフルエンザはそれまで流行していた季節性インフルエンザとの抗原性の違いからパンデミック(世界的な大流行)を起こしやすく過去に1918/19年のスペイン風邪HN1、1957/58年のアジア風邪H2N2、1968/69年の香港風邪H3N2、1977/78年のソ連型H1N1、2009/10年のH1N1pdm2009などがあります。*3
● (高病原性鳥インフルエンザウイルスについて)
鳥に感染するA型インフルエンザウイルスのうち、ニワトリに対して高い病原性を示すウイルスを高病原性鳥インフルエンザウイルスと呼びます。1996年に中国広東省のガチョウから分離されたH5N1高病原性鳥インフルエンザウイルスの末裔が今も中国、ベトナム、インドネシア、エジプトなどに定着しており渡り鳥によって世界中に拡散を続けています。生きた家禽と接触する機会の多い国で鳥インフルエンザウイルスがヒトに感染しています。現時点ではヒト-ヒト感染が容易に起きるパンデミックウイルスは出現しておりませんがその発生が危惧されています。感染重症例では急性呼吸窮迫症候群を起こし呼吸不全で死亡するケースが多いです。*1
● (2025年の発生状況、流行のピーク)
2025年は9/12現在、1週間の定点当たり報告数・都道府県別が長野、京都、福岡、鹿児島、沖縄で流行の目安となる1.0人を超えています。静岡県は0.22です。*7
新型コロナ流行前は多くは1月に流行のピークを迎えましたが、新型コロナ発生以降は12月中にピークがみられ2024/25シーズンも12月が流行のピークでありました(IDWR過去10年との比較グラフ(週報) -インフルエンザ Influenza-|国立健康危機管理研究機構 感染症情報提供サイト)。*2、*6
● 気になった事
2025年9月に流行を示している地域もありますが2024年9月よりも感染者数は少ないです。大流行した2023年の様に9月からの急激な増加はなく、昨年の様に微増しながら11月初めからの流行拡大を予測します。流行のピークがコロナ後~12月に変わっている事は単純に9月から早期感染者が増えた事による“前倒し”なのかそれとも他に理由があるのか疑問の残る所です。インフルエンザウイルス自体は気温の低下、大気の乾燥が進む1月の方が流行すると思われるのですが・・・。
2025/26シーズンも12月が流行のピークの可能性があります。インフルエンザワクチンは接種後2週間で効果が発揮されるため*5、遅くとも流行のピーク2週間前までに接種する事が望ましいです。
・今年も9/16~宝クリニックにてインフルエンザワクチンの予約受付を開始いたしました。インターネット予約のみです(電話受付はいたしません)。10/1~接種となります。当日飛び込みでの接種も可能ですが待ち時間が発生する事をご了承下さい。
・令和7年度、従来ワクチンは13才未満で1回目3500円、2回目3000円(1回目を当院で接種した場合のみ)。13才以上は3500円です。経鼻弱毒生ワクチン(フルミスト、2才~18才)は1回のみの投与で8000円です。
引用出典
*1 インフルエンザウイルス 迫田義博 医学のあゆみ Vol.289 No.10 2024.6.8
*2 インフルエンザ 国立健康危機管理研究機構 感染症情報提供サイト
*3 インフルエンザ 高宮光 月刊地域医学 Vol.37.No.1 2023
*4 インフルエンザ対策 加瀬哲男 バムサジャーナル 36(4):11-15,2024
*5 新庄正宜 インフルエンザワクチン ぺリネイタルケア2025vol.44 no.5
*6 国立感染症研究所 2025/26シーズン向け インフルエンザHA
ワクチン製造候補株の検討について
*7 インフルエンザ定点当たり報告数・都道府県別 2025年第36週 厚生労働省健康・生活衛生局 感染症対策部感染症対策課